オックスフォード大学リンカーン・コレッジ夏季講座 体験談17

体験談17 2018年度参加 理工学部2年 S・Nさん

このプログラムは、英国史に関するディベートとシェイクスピアのドラマ、この2つが大きな柱です。ですが、それらを通して自分の限界を拡張していくことや、また言葉にはできないような現地の文化を肌で感じることなど、その2つの柱に付随するもの、直接関係のないものからの学びもまた同様に多いプログラムです。短い期間に本当にたくさんのことが詰め込まれており、とても濃密でハードな2週間になりました。しかし、それでも最後まで頑張れたのは終始とてつもなくアットホームだったチームのおかげだったと思います。彼らとともに2週間をやり遂げられたことの達成感と満足感は言葉では表せないほどです。

【参加者の構成】

メンバーには文学部と法学部の人が多かったですが、わたしのように理工学部の人もいました。世界史の知識は圧倒的に少なかったと思いますが、必要な知識は詳しく説明されたため、それに関して困ることはあまりなかったように思います(大英博物館で世界史選択の人たちが盛り上がっているときは辛かったです)。

また、講座内容からか例年男女比が偏りがちなようですが、今年は特にその傾向が顕著で全体の参加者20名のうち男子は3名でした。行く前は肩身が狭くならないか心配していましたが、いざ行ってみるとまったくそんなことはなく、(これほどまでになると逆に吹っ切れるなにかもあり)むしろ仲良くなれたような気がします。

帰国子女は数人ほどでした。やはりこのグループを引っ張ってくれていたのは彼女らだったので、わたしたちはそれに食らいつこうと必死でした。

【平日について】

平日はやることがとても多かったです。寝る時間を削って(という意識はあまりないのですが)、毎晩遅くまで、または毎朝早くからディベートの準備やセリフの暗唱をしました。週前半のみんなの睡眠時間は平均でだいたい5時間弱ほどだったような気がします。週の終わりが近づくとさらにそれも短くなり、わたしは3時間ほどしか寝られませんでした(ふつうに辛かったです)。しかし、それは先生やTAたちに強いられているからではなく(むしろ逆で)、眠くてもなぜか結構頑張れてしまうという海外研修特有のアレ、のおかげだったと思います。

以下、朝型だったわたしの一日について述べます。

ある日の朝食.jpg

朝5時に起床し、シャワーを浴びて身支度を整え、その後2時間弱ディベートの用意をします。その後は8:00に朝ごはんを食べ始め、9:00からグループで集まってディベートのイラストの用意と練習です。ゆっくりしている間もなく、緊張のディベートが9:30から始まります。30分強ですべてのディベートが終わった後、英国史に関するレクチャーが11:30ほどまであり、一旦授業は終了です。その後すぐに次の日のディベートに関する情報が担当のTAから共有されます。30分ほど話を聞いたり質疑応答をしたりして、解散します。(⇒右の写真:朝食の様子)

その後はランチです。カレッジの食堂で昼食が出る日には12:45に集合して、ホールまで歩き、いわゆる貸し切りの豪華な部屋で豪華な昼食を食べます。オックスフォードの学生や先生、慶應の仲間たちとおしゃべりをしながら食べているといつのまにか14:00になっていて、歩いて寮に戻ります。

帰ったあとは、息をつく間もなく14:15から午後の部が始まります。演劇の授業を担当するのはとても陽気で元気な先生で、非常に興味深いレッスンを展開してくれました。ゲームをしたり音楽に合わせてジャンプをしたり、部屋を暗くして近くのペアとアイコンタクトを取り続けたり、と、見たことも聞いたこともないような新鮮な内容でした。ちなみに彼女はアメリカの出身らしく、英語がとても馴染みのある感じがして安心した記憶があります(笑)週の半ばになると自分たちのグループが演じるシーンのスクリプトが渡され、担当のTAや他のメンバーと一緒に読み合わせや練習を行いました。午後の部は概ね16:30まででした。

その後は日によっては2時間ほどの自由時間がありました。この間に何人かで街を歩いてプチ観光をしたり、近くのお店でお土産や定番のオックスフォードパーカーを買ったり、TAと卓球をしたりと、いろいろなことをして過ごします。

また、夕食は日によってまちまちです。カレッジの食堂で出ることが多いですが、近くのパブにいったり、買ってきて部屋で食べたりもしました。パンティングをした日にはピクニックのように公園で食べ、シェイクスピア作品を観に行ったときには劇場の近くのレストランでおいしい料理を頬張りました。

シェイクスピアの演劇の鑑賞後.jpg

(シェイクスピアの演劇鑑賞後)

夕食後はだいたい21:00からディベートグループ(1週間固定)とTA(日替わり)でのミーティングがあり、また30分ほど話し合います。その後は自由時間なので、グループでディベートの話をしたり、近くのパブにちょっと飲みにいったり、日によっては洗濯をしたり、誰かの部屋に集まってワイワイしたり、といった感じで少しだけ休息のような時間をとりました。その後、シャワーを浴びて、隣の部屋の人にドライヤーを借りに行き、他愛もない会話をしてちょっとリラックスしてから自分の部屋に戻り、スマホをいじって日記を書いて、ベッドに潜り込みました。その日その日で内容が本当にガラリと変わるので、平日と一括りにするのは難しいですが、だいたいこのような感じです。

【休日について】

休日は、平日と打って変わってほんとうに自由な日です。寝ているのもありですし、オックスフォードの街を散策するのもいいです。また、TAが企画してくれるツアーに参加することもできます。ロンドンに泊まったというグループもありました。

わたしの場合、最初の休日は何人かでロンドン観光をしました。いわゆる有名所を見て回った感じです。はじめてのイギリスだったのでそうしましたが、ロンドンはいつでもいけるからオックスフォードを旅したほうがいいという考えもあります。オックスフォード自体がかなりの観光地で、みるべき場所もたくさんありとても楽しめるようです。

また、もう一日はTA企画のコッツウォルズに、あとの一日はまたTA企画のブレナム宮殿に行きました。ここらの休日がちょうど研修の折り返し地点だったので、慶應の仲間たちと本当に仲良くなりました。とても楽しかったです。

実際にいろいろなところにいってみて思ったのは、これらの旅がほんとうに貴重な経験だということです。貴重だったのはその目的地というよりは、何気ない街の標識とか、そのあたりを歩いている人の振る舞いとか、駅ナカのちょっとしたカフェでのオーダーの仕方とか、そういったような、文字や写真では伝えにくいけれど確かに存在する日本との違いだったように思います。月並みな表現かもしれませんが、実際に現地を訪ね、肌で感じないと体験できないものでした。

また、休日にはイギリスのアルコールの文化を思いきり体験することができました。大学生とアルコールというと日本ではよくないイメージがつきまといますが、成人年齢が18歳のイギリスではもっとホワイトなもので、大学の夕食では毎回ワインが出ますし、有名なパブにTAが連れていってくれたり、近くのお店で買ってきてTAたちも含め何人かで部屋で飲んだりもします。これも素敵な異文化体験でした。

【食事について】

てっきり学食のようなものを想像していた食事ですが、どちらかというとホテルや結婚式のそれに近いものでした。おいしく、また豪華です。オックスフォードの人にきいたら、これはわたしたちを特別扱いしてくれているわけではなく、一般的にそうなんだと言っていました。ここも違いを感じたところでした。

【仲間たちとの思い出】

このプログラムは、参加者が20人で、教授やオックスフォードの学生5人、その他の先生を含めて全体で30人ほどの、非常にコンパクトな講座です。それに加え、内容の大変さや、プログラムとしての充実さ、一緒に過ごす時間の長さから、みんなが本当に本当に大好きな仲間になります。この講座の公式な内容ではないですが、語らずには済まない大きな魅力です。

まずは先生たち。本当にパワフルです。また、とてもフレンドリーです。日本の先生と学生の関係とはまったく違いました。「教えてやる!」という感じではないのに、本当に多くのことを学びました。バーで誰よりも元気に踊っていたのには驚きました(笑)

オックスフォードの学生たち。TAといっても本当に同年代の人ばかりで、中にはわたしよりも年下の人もいました。何かをするときには必ず彼らが一緒にいてくれました。一個上のTAとは歴史の真面目な話をしたり、オックスフォードの学生の裏話をきいたり、ときには恋愛の話をしたりもしました。そんなこともあり、泣いてしまう人が多い帰国前日のパーティーでは、わたしも無事涙をこらえきれず、数年ぶりに子供みたいに泣きました。本当に大好きなTAたちです。

そして、同じ慶應の仲間たち。朝早くからディベートの話をしたり、夜中の3時まで一緒に部屋に籠もってセリフを覚えようと頑張ったり、一日中ともにロンドンを駆け回ったり。日本食が恋しくなった日には、同じ棟の5人でミソパと称して味噌汁パーティーを開くこともありました。ドラマの発表の後に豪華なディナーを食べ、全員で日付が変わるまでバーで踊ることもありました。部屋が隣でいつもドライヤーを貸してくれた子と帰りの飛行機で運良く隣になり、ずっとテトリスをしていたのもいい思い出です。「ロミオとジュリエット」でジュリエット役をやった子とふたりで練習をしたことや、「冬物語」のラストシーンの後のサプライズカーテンコールを遅くまで考えたことは、絶対に忘れません。

というような感じで、思い出を挙げるとキリがないです。SNSのグループのアルバムには2000枚以上写真がアップロードされていて、メッセージをノートに投稿している人もいます(笑)

そんな、楽しいことだけではなく、つらいこと、大変なことを一緒に乗り越えた仲間たちが、本当に大好きです。ひょっとしたらこれが今回の研修の一番の財産かもしれません。

【最後に】

事前研修の段階で、この講座はすべての短期海外研修プログラムの中でもっともハードだと伝えられてから他人と違いちょっとワクワクしていた自分ですが、思っていたよりも自分の課題が見え、本当に学びの多いプログラムになりました。他のものを体験していないのでなんとも言えないですが、大変なことと楽しいこととがどちらもこれほどまで充実している講座はそう多くはないと思います。迷っている人には、本当におすすめできる講座です。

最後になりますが、先生やTA、慶應の学生たちのほかに、義塾の国際センターの方々をはじめ、旅行会社の方々や食事を作ってくださった方々(彼らとも思い出があります)、部屋をいつもきれいにしてくださった方々など、本当に多くの人々にお世話になりました。みなさんのご協力なしに、この素晴らしい研修はありませんでした。この講座に関わってくれたすべての方に感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

パーティで20人集合.jpg

(最終日の集合写真)

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