オックスフォード大学リンカーン・コレッジ夏季講座 体験談15

体験談15 2018年度参加 文学部3年 M・Sさん

【はじめに】

説明に書いてある通り、この講座は他と比べて圧倒的にハードであることに加え、高い語学力を必要とされます。私は高校時代から英語はむしろ苦手科目であり、外国人に道を聞かれても何も言えずに身振り手振りで乗り切ってきた人間です。ですが、内容に興味があったことと、海外経験がなかったため学生のうちに行ってみたかったことからこの講座に申し込みました。私と同じように、関心はあるものの語学力に不安がある人の参考になればと思います。

【一日の様子】

朝はなるべく早く起きて、朝食までにディベートの最終準備とドラマの台詞の確認をしていました。寮は一人部屋なので、自分の生活リズムを乱されることなく過ごせるのが良かったです。

午前の授業は前半でディベートを、後半でそのテーマに基づいた授業を受けます。テーマは第一週が中世、第二週がスチュアート朝の歴史でした。一人三分という限られた時間の中で、様々な図を用いて聴衆の印象に残るスピーチをすることは、最初は難しく感じたものの、とても楽しい経験でした。勝敗はその場で多数決によって決まるので、勝てたときの爽快感は準備の苦労を忘れるほどです。ただ、授業後はすぐに翌日のディベートのテーマが発表され、TAによるレクチャーが行われ、また準備に追われます。

お昼は火・水・木はリンカーンの食堂で、月・金はTAにおすすめのお店に連れて行ってもらってランチをしました。私はスピーキング力が皆無だったため、先生やTAが近くに座った時の緊張感は凄まじいものでしたが、皆さんが優しくわかりやすく話してくださったため、楽しく会話することができました。食事の味も最高でした。イギリスでの二週間で食事がまずいと思ったことは一度もありませんでした。

ただ、語学力のなさを最も痛感するのもこの時間でした。言いたいことがあっても英語にできない歯がゆさ、何度使ったかわからない“Please speak more slowly.”…特に大変だったのはファストフード店です。店員が早口で何を言われているのかわからず、焦っているうちに行列が長くなっていくのは非常に恐ろしかったです。

十分ほどの休憩の後はドラマの授業です。Zipzapゲームでウォーミングアップをした後、演劇の先生による様々なエクササイズが行われます。ペアやドラマの班で即興でダンスのようなものを作ったり、与えられるさまざまなシチュエーションに合わせて感情を作っていく練習をしたりします。

台本と役が与えられた後は、発表に向けた練習がメインになってきます。第一週は『ロミオとジュリエット』、第二週は『冬物語』を、四つの班で分担して一つの作品を作り上げていきます。台詞を覚える時間は二日ほどしかなく、シェイクスピアの古英語にも苦しみましたが、TAの励ましと班のメンバーが努力する様子に刺激を受け、なんとかやり遂げることができました。

授業の後はストラトフォードやロンドンへ観劇に行ったり、近くの川で舟遊びとピクニックをしたりしました。月曜と金曜は素敵なワインとともに皆でディナーをします(イギリスでは18歳から飲酒可能)。特に金曜日のディナーは、ドレスアップしてろうそくの光のもと豪華なフルコースを楽しめます。そのあとは地下のバーに行って、日付が変わるまで踊り狂いました。日本では絶対にできない経験でした。

グローブ座.JPG

                         (ロンドンのグローブ座)

【休日の様子・現地の街の様子】

到着してすぐの休日は数人でオックスフォード周辺を探検し、週末はTAの企画してくれたコッツウォルズ観光、チャーチルゆかりの城であるブレナム宮殿の観光に参加しました。特にコッツウォルズの豊かな自然と可愛い街並み、アイスクリームの味が印象に残っています。

オックスフォードの街は美しい建物がいっぱいで、歩いているだけで幸せな気分になりました。ロンドンには観劇で行っただけなので詳しい比較はできませんが、オックスフォードのほうが治安も景観も上です。実際に一人で街にでることはなかったのですが、夜を除けば単独行動も可能なレベルだと思いました。

聖マイケル教会の塔から見たオックスフォードの街並み.JPG

                  (聖マイケル教会の塔から見たオックスフォードの街並み)

日本食の店もいくつかあります。私は一度日本人に不人気の店で特に評判の悪いラーメンを食べたのですが、そこまでひどいとは思いませんでした。

【最後に】

語学力の向上のみを目的とするならば、たった二週間の留学はもの足りないでしょう。ですが、この講座を通して得られる表現力や自信、勝利や成功を追求する姿勢、リスクを負う勇気といった精神的な成長はそれを上回るものですし、ここでないと学べないものだと思います。少しでも興味があるならば、勇気を出して参加することを強く勧めます。

最も大きいこととして、私は英語を学ぶ目的ができました。かつては漠然と「就職に有利だから」「話せて当たり前の言語だから」と思っており、学習に対してモチベーションが全くありませんでした。今は、この講座の先生方やTAをはじめ、これからの人生で出会う英語圏の人々と話したい、彼らのことをもっと知りたい、自分のことをもっと伝えたい、そういった思いが私を動かすようになりました。

このような素晴らしい講座を用意してくださったNeil先生、国際センターの皆様、そして迷惑ばかりかけた私を見捨てずに支えてくれたTAと19人の仲間にはどんなに感謝しても足りません。本当にありがとうございました。

ドラマ班の集合写真.jpg

(ドラマ班の集合写真)

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