ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季講座 体験談15
体験談15 2023年度参加 文学部1年 S・Hさん
【応募について】
私は、数年前に慶應義塾大学の短期海外研修に参加した経験がある従兄弟から紹介されて、この研修の存在を知りました。私は大学1年生の時にこのプログラムに参加したのですが、大学1年生で参加する場合は、用意しなければいけない書類や取得しておかなければいけない資格など、応募に際して満たしておかなければいけない条件(1年生は大学の成績がまだ出ていないため高校の調査書の提出が必要、英検やTOEICなどの基準を満たさなければいけない、など) が沢山ありますので、この記事を読んでこのプログラムに参加したいと思った方は読み終えた後すぐに応募資格や応募方法のページに戻っていち早く準備に取りかかることをお勧めします。
【ダウニング・コレッジ周辺の街の雰囲気】
ケンブリッジはロンドンなどの都市部ほど人が多くなく、自然豊かで過ごしやすい街です。ダウニング・コレッジのすぐ近くにスターバックスやその他の飲食店、スーパー、薬局などがあり、ほぼ何でも手に入るので日本から持参し忘れたものがあっても買い足すことができ、あまり不自由はしませんでした。10分ほど歩けば大きなショッピングモールもあり、私は休日にそこで服などの大きめの買い物をしました。その近くにケンブリッジグッズ専門店もあるのでお土産などを買うといいかもしれません。
ダウニング・コレッジの近くのケンブリッジグッズ専門店
【平日の生活】
年度によって変更があるかもしれませんので、以下はあくまでも私の年度の話です。
朝9:00~9:30の間に食堂で朝食をとり、その後すぐに授業が始まっていました。Coffee breakがあるクラスは大体毎日10:30~11:00に休憩がありました。13:00~14:00は昼休みで、Butterfield Bar&Cafeという小規模の食堂(大学の敷地内にある)でランチを食べてもいいし外食をしてもよく、割と自由でした。14:00~17:00は適宜休憩をはさみつつ授業をし、あとは18:00~18:30に食堂で夕食をとるくらいで夜は基本自由でした。(大学の敷地内にあるジムに行ったり課題をしたりと皆自分の好きなように時間を費やしていました、あまり大学の外に出歩く人は見かけませんでした)
週に3~4日は大体19:00~TAさん達が企画してくれたNight activityに参加することができますが、その分寮に帰るのが夜遅くなるので自分の課題の進捗状況や体調をよく考えて参加したい時だけ参加するようにしていました。(Karaoke night, Punting, Dance nightなど)
【各週の学習内容】
1週目は初日(月曜日)に英語のクラス分けテストを受け、2日目(火曜日)から上級、中級、初級の3つのクラスに分かれて英語を学びました。私は中級クラスだったのですが、英文法の再確認やリーディングの問題を解くような活動と、提示されるテーマについて話し合ったり、ゲームをしたりするワークショップのような活動をしました。最終日(金曜日)にはケンブリッジに関係する自分の好きな話題に関するプレゼンテーション(1人持ち時間8分)をしました。プレゼンの後に必ず質疑応答の時間が設けられ、その回答の文法や発音の正確さとプレゼン内容の充実度の2つによって評価されていたようです。他にも、授業への貢献度や発言回数もカウントされて評価されている、とTAさんがおっしゃっていました。しかし、水曜日にプレゼンの内容を決定したので準備時間が木曜日と金曜日の2日間(しかも午前は普通に授業を行うのでほぼ放課後しかやる時間がない)しかなく、かなり時間の制約がある中で準備したので、きつかったのを覚えています。大学内の図書館が24時間開いているので、そこでスライドや原稿を練るようにしていました。体調を崩している人も見かけたので、できる限りのことをやって、自分を追い込みすぎずに準備すべきだと思いました。
ダウニング・コレッジ内の図書館
2、3週目は各ストランド(学習内容別に分けたコース)に分かれて講義を受けました。私はIR(International Relations)だったのですが、午前に教授による講義があり、午後はその内容のまとめと資料(新聞や学術図書)に基づいたディスカッションなどを行いました。午後は主にTAさんが授業を進行してくださって、発言するタイミングが沢山あり、自分の英語力を試したり、英語でコミュニケーションをとったりできる絶好の機会なので、いい意味で利用した方がいいと思います。私の友達の1人は、1日3回必ず発言すると決めていたと言っていました。私は周りの人達の英語のレベルの高さに圧倒されて自信をなくし、このタイミングであまり発言ができず、嫌になってしまった時もありました。そこで、これから参加する方々には、この留学に行く前に単語だけでも復習し直しておくことをお勧めします。幸いTAさんたちが皆優しくて、私の言いたいことを汲んでくださることが多かったので最後まで頑張ることができましたが、海外に行く前にできるだけ英語力を高めておいた方がいいと実感しました。私の友達の中には、このプログラムに行く約1ヶ月前(事前研修の直後くらいのタイミング)からオンライン英会話を毎日やり、英語で話す癖を日本にいる時からつけておいた、という人がいました。とてもいい案だと思うのでぜひ真似してみてください。そして課題に関してですが、2週目の最終日(金曜日)までに1000words程度のessayを書くというものと、3週目の木曜日に行われるPresentation A(2人ペアで持ち時間10分)の発表と、同週の金曜日に行われるPresentationB(4人班で持ち時間20分)の発表を行うというものの3つでした。これらも1週目と同様、他の日は普通に授業を受けながら放課後に準備しなければいけなかったのできつかったです。かなり専門的な内容を扱ったので文献調査や調べ学習にも時間をかけねばならず、大変でした。Presentation Aは同じストランドの人達だけの前で行われ、PresentationBは他のストランドの人たちも合わせた60人全員の前で行われました。
4週目も主に各ストランドに分かれての活動だったのですが、活動内容が2、3週目とは大きく異なっていました。この週は、2、3週目で学んだことを活かして、SDGsの活動と関連づけた内容のポスターを作成するという活動を行いました。1週間かけて調べ学習からポスター作成、さらにそのポスターについての説明ビデオの撮影までをじっくり行いました。そして最終日にポスター展示会が行われ、ポスターの評価があり、フォーマルディナー(滞在最終日に開催されたディナー)の際に最も良いポスターを作成したチームが表彰されました。フォーマルディナーでは、他にもストランドごとに最も良いessayを書いた人、最も授業に貢献した人などが表彰されました。
【休日の生活】
私は1、4週目の週末をケンブリッジ観光に、2週目の週末をロンドン観光に、3週目の週末をフランス観光に費やしました。
1、4週目のケンブリッジ観光では、大学の周辺を散歩したり、大型ショッピングモールで買い物をしたり、大学近辺のレストランで食事をしたりしました。他にも、ケンブリッジグッズ専門店でお土産を買ったり、聖メアリー教会に登ったりと時間に縛られずゆったりと観光することができました。
2週目のロンドン観光では、キングスクロス駅、ビッグベン、ヴァッキンガム宮殿、ウェストミンスター寺院、セントポール大聖堂、大英博物館、ナショナルギャラリーなどのザ・観光スポットのような王道の場所から、シャーロックホームズ博物館、パディントン駅、ロンドンアイなどの少しマイナーな場所まで全て制覇する勢いで、分刻みで計画を立てて観光しました。そのせいかかなり慌ただしくなってしまい、休日なのに疲労が溜まり次の週の授業に少し影響が出てしまいました。余裕を持った計画を立て、回りきれなかった分は次の週に回すなどした方がいいと思いました。これはロンドン観光に行った人が皆口を揃えて言っていたことなのですが、ロンドンを1日や2日で周り切るのは不可能に近いので、ロンドン観光にかける日数は多めに設定しておいた方がいいと思います。そしてロンドン観光と言えばオイスターカードが有名ですが、私は特にオイスターカードの必要性を感じませんでした。なぜならロンドン市内の電車は全て行きにケンブリッジ駅で購入した切符で乗れたからです。しかし、ダブルデッカーに乗って観光したい方はオイスターカードがあると便利なので購入しても良いと思います。(クレジットカードのタッチ決済でも乗車可能ですが。) 昼ご飯はイギリスならではの食事を楽しみたいと思い、アフタヌーンティーやフィッシュ&チップスが食べられるレストランを探して食事をしました。ロンドンのキングスクロス駅からケンブリッジ駅に帰る電車は本数が少なくとても混み合うので、事前に帰る電車の時間を調べて余裕を持って駅に着いた方がいいです。万一ギリギリに電車に駆け込んで座れないと約50分間立ちっぱなしでかなり辛いです。
ロンドン観光でのアフタヌーンティーの様子
3週目のフランス観光は、計画の時点から、事前にアプリでユーロスターの席を取るなど、かなり早めに動き出していました。パレロワイヤル、セーヌ川(ポンヌフ)、ルーヴル美術館、ガルニエ宮(パリオペラ座)、凱旋門、ヴェルサイユ宮殿、バスティーユ広場、アンヴァリッド廃兵院などを訪れました。フランス観光で特に気になったのはスリの多さです。私は8人でフランス観光をしたのですが、写真は1人が撮ってその人の荷物を見張る、リュックを前に持つ、話しかけられたら荷物を手で押さえる、アンケートなどに答えない、なるべくお土産は買わない(荷物が多いと裕福だと思われるためスられる対象になりやすい)など、事前にスリ対策を話し合った上で行ったので、誰1人何も取られることなく無事に帰ることができました。フランスではかなり気を張っていた方がいいと思います。
【このプログラムを通して得たもの】
私がこのプログラムに参加して得たものは3つあります。
1つ目は、英語圏の方々と話すことへの抵抗感が無くなったことです。今までは日本国内で英語で話しかけてくる人がいても、緊張して答えられなかったり、逆に話しかけようと思っても、文を頭の中で組み立てている間にその機会を失ってしまったりすることが多くありました。このプログラムに参加して気づかされたのは、英語を上達するために1番大切なことは「うまくやろうとしないこと」です。もちろん正しい文法で話すことや豊富な語彙を持つことはとても大切です。しかし実際に話す際には、ネイティブに対して上手い言い回しで言おうとか、完璧な文法で話さなきゃいけないと思う必要はないと思います。向こうはプロなのですから、ある程度私が何を言いたいのかは汲んでくれます。最も大切なのは現地の人と話すことを恐れずどんどん自分から話しかけ、沢山失敗してそこから学ぶことだと思います。多く話せば話すほど沢山のフレーズや現地の人が使う言い回しを知ることができ、それを繰り返し使うことで覚えていきます。私は食事の時間などになるべくTAさんたちの隣に座るなどして自分から英語で話すチャンスを掴みに行っていました。このプログラムに参加する目的が英語力を向上させることだという人はとても多いと思います。その目標を達成するために、上記のことを少しでも実践してみることをお勧めします。私もまだまだ流暢に英語を話せるわけではないので、帰国後も毎日オンライン英会話で海外の人と話し、せっかくイギリスで得た英語でコミュニケーションを取るという機会を無駄にしないよう、英語で話すことを継続させる努力をしています。
2つ目は、国際関係に興味を持てたことです。私は文学部という一見国際関係には関係なさそうな学部に所属しているため、現地では国際関係を専門的に学んでいる周囲の人との差を感じ、辛くなった時もありました。しかし全ての学問は繋がっており、私の学部でも興味があればいくらでも国際関係に関する分野について研究することができると気づいたのは、私にとって大きな出来事でした。まだまだ紛争や貧困が絶えない世界の多くの国々やその問題について学び、日本に戻って大学で学びたいことの選択肢が広がりました。
3つ目は、自国についての自分の知識の無さに気づくことができたことです。ケンブリッジの人達から日本について(文化、歴史、政治、教育制度など)沢山質問をされ、聞かれるまで疑問に思わなかったことや日本と他の国々との違いに気づき、もっと自国についても詳しくなって、外国の方々に自信を持って説明できるようになりたいと思いました。
【まとめ】
このプログラムは、人間として成長することができるだけでなく、多くの学びを得ることができる最高のプログラムだと思います。1ヶ月とは思えないほど濃い時間を過ごすことができましたし、人生で1番充実した1ヶ月だったといっても過言ではありません。このケンブリッジ大学のプログラムは1ヶ月と他のプログラムよりも長いので、その分学べることも多いです。異国の文化を理解し、観光などを楽しめるだけでなく、英語力を向上させ、興味のある分野を深く学ぶこともできます。また、このプログラムに参加している人達は先見的で、自分の将来について真剣に考えている人達です。つまり、現地の人からだけでなく、一緒に行く仲間からも沢山の良い刺激が受けられます。ですので、もしこのプログラムに参加することを悩んでいる方がいたら、参加することを私は強くお勧めします。このプログラムが必ず人生の財産になると私は考えます。
ダウニング・コレッジ内の中庭の様子