ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季講座 体験談13

体験談13 2018年度参加 商学部2年 S・Kさん

【得られたこと】

プログラムを通して、より社会的な人間になることができました。

留学すると決まれば、その目的を定めることは重要です。この認識はあったものの、現地に着いてからでさえ、私には明確に言及できるものがありませんでした。短い時間的制約の下で、大それた研究はできないと思っていたし、それは事実でした。

しかし、自分にとって大きな発見があったことも事実です。

他人に意見を伝える、そして彼らの考えを聞く。社会的動物の一人であるはずの私が、この単純な行為すら、充分に行えていなかったことを痛感しました。いかに困難であるかを学ぶと同時に、その愉快さと有益性は、それまでの期待を遙かに上回ることに気がつきました。長く探し続けていたプログラムの意義は、私にとってコミュニケーションという言葉に集約されると思います。大きな意識的変化と小さな態度の変化は、この一ヶ月を通して成長した点です。

以下では、実際の4週間の活動内容に加え、そこから学んだことを上記との関連も含めて記します。

【前半2週間について】

前半の2週間は、作文と面接で分けられるクラスごとに、Drama WorkshopおよびEnglish Courseに取り組みました。

前者では、俳優の育成スクールに入ったような気分になりました。言葉や身体を利用してあらゆるものを表現したり、共同作業でゲームに臨んだりしました。時には言葉が禁止されたり、動きのスピードに変化を加えたり、体験を通してコミュニケーションにおいて重要な要因を探り出しました。コースの終わりには、変化をテーマにグループでドラマを作成し発表しました。

後者では、講師の方の授業やディスカッションを行いました。歴史や文化、教育システムについてなど、幅広い内容を議論しました。ブレクジットを個人のアイデンティティと関連させる授業は、興味深いものでした。クラスにもよりますが、文法など英語自体の講義はありません。ただ、TA(ケンブリッジ生のアシスタント)はもちろん、他国の国籍を持っていたり、滞在経験があったりと、異なる経歴を持つ人たちとの交流は意義深いものでした。また、ケンブリッジとの関連事項をテーマに、最初のプレゼンテーションを行いました。

特に上記のDrama Workshopでは、講師の方および現地の学生から強く影響を受けました。自分との対比も含めて、彼らは自己を表現するのがとても上手です。そこで恥ずかしさを感じる様子はないし、言動には自信が見られます。彼らは、大勢の中で自分に焦点が当たることを嫌っていないと思います。さらには、想像力が豊かでどんどんアイデアが出てきます。それらは自己嫌悪に陥るに十分なほど、圧倒的なものでした。同時に、活発な情報交換をしていくという点では、ものすごく収穫がありました。文化的な背景は考慮される必要があります。ただし、適度な自己肯定のもとに、積極的に考えを伝えるのが常識化された中で、堂々と多角的な考えを表現していくという態度はすべて一貫していると思いました。

【後半2週間について】

後半の2週間はモジュールごとに分かれての講義やディスカッションで、国際関係論を選択しました。毎回一つのテーマに関して、先行研究を課題として読み、授業を受け、話し合うという流れです。評価は、個人でのエッセイ、モジュール内(ペア)と全体(5人グループ)でのプレゼンテーションによってなされました。モジュールごとによる課題の量に大きな差はなかったと感じています。 

最も学ぶことが多かったのはディスカッションです。6人のグループに分かれ、TAと一緒に議論するというものでした。一つには、学問的な理解の向上があります。それぞれ専門知を持った方が担当してくれるので、授業の復習から新たな問題提起まで、体系的な理解を促してくれます。

一方でより一般的に、彼らは頻繁に自分の意見を述べるし、我々にも求めます。研究論文の多くに見られるように、社会科学は分析の学問だと思っていました。しかし、その是非に関わらず、自分はどう考えるのかという主観的な意見をよく求められました。例えば、第三国の干渉について、あるいは地域統合について。答えのない問題に対しての意見を尋ねられたとき、自分に明確なそれがないことに苦しみました。

学術的なディスカッションは貴重な経験でした。しかし、コミュニケーションという意味づけにおいて、それ以前に自分の考える意見を意識的に持つ必要性を痛感しました。それは議論を深めるだけでなく、他者と異なることを前提としています。学問的知見とは別に、それらを受け入れ、互いに表現し合う姿勢を学んだ気がします。

ホワイトボード.jpg

(授業で使用したホワイトボード)

【生活について】

平日の9時~17時が活動時間で、それ以外は自由に課題に費やしたり、他の人と集まったりできました。また、カラオケやクイズ大会などが企画されました。土日はケンブリッジやロンドンを観光しました。寮の詳細については、2017年度体験記を参照されたいです。

【終わりに】

この体験記の執筆は、自分のためというところが大きいです。依頼に返答した動機は、文章に起こさないと整理されないくらい、私にとって大きな発見や影響があったことです。それは現地の方々からもですが、50人を超える同じ慶應の学生にも同じです。学部を超えた、たくさんの面白い人々に出会えます。この体験記が、次年度以降の参加を希望される方の後押しになったとしたら幸いです。 

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(講座参加者との写真)

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