ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季講座 体験談9

体験談9 2015年度参加  薬学部3年 S・Mさん

【前半2週間の英語の講義について】

英語の講義を受けるにあたって、まず簡単な英作文と面談の結果を踏まえたクラス分けが行われました。クラスは全部で6つ、レベルは3段階、つまり各段階2クラスという形で分かれました。講義は、一方のクラスが午前中講義の場合、もう一方のクラスはTA2名によるワークショップを行い、午後はそれを反転させるという感じでした。

先生の講義は学生参加型の形式で、何かテーマが与えられた際には積極的な意見の発言が求められました。主な内容としては、「英国と日本の大学教育制度の違い」「British EnglishとAmerican Englishの違い」「プレゼンテーションスキルについてのレクチャー」などで、これに加えて毎日最後の30分間を使って文法課題が課されました。午後のワークショップでは、英語で積極的に情報を発信することで、自分の英語に自信をつけることを目的として様々なワークが行われました。例えば、有名人の名前が書かれた紙を引いてそこに書かれた人について、自分の今持っている知識で紹介し、それが誰かを周りの人に当てさせたり、英国で使われる慣用表現を学び、4人程度のグループでそれを使う状況を即興で考え、実際に演じたりもしました。

週明けにはアセスメントとして8分間の個人プレゼンが行われました。テーマは「ケンブリッジに関するもの」で、私はケンブリッジ出身のノーベル賞受賞者を選択しました。これまでせいぜい5分程度のプレゼンしかやったことのない私にとっては、8分という長い時間をどう対処していくか非常に悩みました。しかし、それにめげずに内容を吟味し、夜に仲間とプレゼンし合って研鑽を積み、何度も時間を計りながら練習を重ねた結果、本番でかなり満足のいくプレゼンができました。

 2週目ではちょっと変わったワークショップが行われました。ワークショップは全部で3種類ありましたが、その中で私はApprenticeというワークショップを選びました。このワークショップでは、1チーム5人に分かれて、日本の若者に有名なもので英国市場に通用し大儲けできる製品を考え、それを他チームに対しプレゼンするというものでした。どうやったら日本の製品を英国の市場で売れるようにできるのか、どうやって収益を得ていくのかを考えるのは難しかったですが、それ以上に、それをどうやって分かりやすく投資家(聴衆)に伝え、投資したいと思わせることができるのかを考えるのは非常に難しかったです。しかし、こうしたワークショップはこれまで経験したことがなかったので、とても学ぶことの多い有意義なものとなりました。

 

【後半2週間の専門科目について】

後半2週間のテーマは大きく、「行動はどのように制御されているのか」「記憶にはどのようなものがあるのか」の2つに分けられます。午前は先生によるスライドを用いた講義、午後はTAによる午前の講義の補習及びワークでした。先生に重要なポイントを分かりやすく丁寧に説明して頂けるので、大枠を捉えることはそれほど苦労しませんでした。しかし、スライドで多数登場する実験の意味を逐一理解するのはかなり難しく、そういった不明な点は、午後の補習や仲間同士でのディスカッションでなるべく解消するよう努めました。

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講座のアセスメントは全部で2つあり、それは同じモジュールの塾生20人の前で行う個人プレゼンと、コレッジ内の劇場で他のモジュールの塾生合わせた55人の前で行う最終グループプレゼンでした。最初の個人プレゼンでは、講義で使用されたスライドを1枚担当し、講義で理解したことに加えて関連のある科学的エピソードを3分程度で発表するというものでした。最終プレゼンでは5人1グループとなり、講義で扱った記憶の中から1つテーマを選び、それに関して10~15分程度発表しました。最初の個人プレゼンは、まずスライドの内容を把握、そこに新たに科学的エピソードを盛り込んで3分程度に詰めていくのが難しく、何度も推敲を重ねました。グループプレゼンの方も、私が積極的にプレゼン完成までのスケジュールを考え、グループのメンバーに仕事を割り振って、夜遅くまでみんなと練習を重ねました。

 

【休日観光について】

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私は、基本的に休日をロンドンで過ごしました。コッツウォルズやスコットランドなどの地方に行くという選択肢もありましたが、私はケンブリッジ出発となると移動時間だけで貴重な休日の時間を無駄にしてしまうと考え、ロンドンをじっくり観光することにしました。観光場所をロンドンに絞ったおかげで、大英博物館やバッキンガム宮殿、グリニッジ天文台、ビッグベン、ロンドン塔、ロンドンアイにセントポール大聖堂など、様々な観光名所を巡ることができました。中でも特に良かったのは2つあり、まず1つ目は遊覧船に乗ってテムズ川を下りながらロンドンの観光名所を眺めるというものです。その日は晴天で非常に日差しが強かったですが、それでも8£程度でロンドンの観光名所や有名な橋(映画「ハリーポッターと謎のプリンス」でデス・イーターに壊されたミレニアムブリッジなど)を、川の上という違った視点から見られたのは非常に有意義で楽しかったです。そして2つ目が、ミュージカル「オペラ座の怪人」です。私は前から2番目の真ん中の席で観たので、演者の表情や息遣いまで見え、作品にぐっと引き込まれました。

 

【最後に】

私は今回の留学が初めての海外経験で、正直当日飛行機に乗るまで全く実感が湧きませんでした。「海外留学は大学生のうちに1度は経験したい」「自分のこれまで勉強してきた神経についての知識を英語で発展させてみたい」こうした思いから今回の留学に思い切って参加しました。最初は不安ばかりが先行していましたが、留学の中でできた仲間と日々を過ごすうち、そうした不安はいつの間にか消え、日々の英語の授業を集中しながらも楽しんで受けることができました。また、日々講義を聞き、TAや先生へ積極的に質問していく中で、この脳神経科学という領域に非常に興味を持ちました。現在も、講義で扱った内容に関する書籍を読んで日々理解を深める努力を続けています。

私は今回の留学で、勉強面では英語力、特にプレゼンテーションスキルを向上させ、脳神経科学に関する見識を広げることができました。生活面では、英国での暮らし方や英国の文化、アイデンティティを学び、様々な歴史的建造物や観光名所を実際に訪れ、その歴史を肌で感じることができました。そして最後に、今回の留学で得られて最も良かったのは、こうした経験をともに分かち合える素晴らしい仲間ができたことです。これは決して冗談などではなく、非常に重要なことです。彼らがいなければこの留学をここまで充実したものにはできなかったと私自身強く思います。今後参加される予定の皆さんも、授業についていくのは大変で、なかなかうまくいかないこともたくさん出てくるかとは思いますが、仲間と助け合いながら努力すればきっと乗り越えられます。皆さんがこの留学でかけがえのない貴重な経験ができることを心から願っています。

  

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