オックスフォード大学クライストチャーチ・コレッジ夏季講座 体験談10

体験談10 2018年度参加 法学部4年 K・Sさん

【現地研修について】

今回のプログラムでは、風光明媚な学園都市の中心に位置するカレッジに一ヶ月滞在し、国際関係論の授業と英語研修を受けました。

前者では、王立歴史学会フェローでイギリス国防省などでの勤務経験のある先生から、移民やNGOの台頭といったテーマについて、哲学や国際倫理学の諸概念と結び付けた講義を受けました。この講義では、単に現在の国際情勢を概観するだけでなく、政治学の基礎的な概念から丁寧に説き起こし、学生の意見を問うというスタイルの講義は、やや難解であった反面、新鮮でありながら普遍的な学問の一端に触れた思いでした。何より、普段は専門分野に凝り固まっていた思考様式に、新たな物の考え方を付け加えられたことが一番の収穫であったと思います。また、先生の視座は基本的には欧州、英国あるいはキリスト教圏のものであり、節々でその違いに気付かされることも多かった。このようなことを日本で経験することは困難であり、この講義を英国の地で受けたことには大きな価値があった。

最終プレゼンテーションでは、各グループが「戦争は正当化されうるか?」「愛国心が現代国家にとっていかに重要か?」といったテーマの割り当てを受け、関係する歴史的事象などを丁寧にリサーチするといったこれまでにない学習経験を得た。そうしたことも含めチーム全体でよく協力して準備し、プレゼン終了後には先生から「歴史への言及、論理的展開、プレゼンの技法ともに大変素晴らしかった」お褒めの言葉もいただけました。なお、もちろん授業は全て英語ではありましたが、我々を気遣いゆっくり話していただけたこと、また、当該分野の予備知識があったことから、大枠の理解に困難を伴うことはさほど多くなかったと感じました。

Chch in Oxford 2018夏_180912_0021.jpg

また、英語研修については、多彩な題材を用いつつ、インタラクティブで密度の濃い授業を受けることが出来たように思います。英語力については中々自己評価が難しいところはありますが、担当教員からは「あなたはスピーキングが良い」とお褒めをいただけたことで、より自信を持って話すことができるようになったことは収穫でした。反面、聴解については、分野に限定されない教材や文法用語を取り扱う英語研修の方がむしろ国際関係論の授業よりも理解に困難を感じる場面が多くあり、未だ一層の努力が必要であることを痛感させられました。また、英国人の感覚に基づき、どのような表現が丁寧なものとして受け取られるか、といった点についてレクチャーを受けたことは今後大変役立つように思います。(⇒右の写真:図書館の様子)

以上のように、今回のプログラムでは、幅広い意味で教養を高めるとともに、思考の幅を広げることが出来たと思います。

【イギリスでの生活について】

次に、英国における生活についてお話しします。あくまで上記の学習に差し障りのない範囲に控えましたが、それでも週末に何度かロンドン観光に出かけることができました。大英博物館のロゼッタストーンやトワイニング本店(ロンドン最初の紅茶店)の素晴らしさは多言を要さないでしょうが、特に印象に残っているのは都市の端々に英国が立憲君主制国家であることを感じさせるものが存在していることでした。例えば、テムズ川には第二次世界大戦で活躍した軽巡洋艦「HMS ベルファスト」が記念艦として一般公開されているが、このHMSとは"His/Her Majesty's Ship"すなわち「女王陛下の船」を意味する。この"Her Majesty's"や"King/Queen's"という接頭語は公私を問わずとても多くの施設の名前に附されており、国家としてのアイデンティティーを興味深く感じ取りました。その他、英国政治の中心であるウェストミンスター地区を始めとするロンドン中心部では、ウィンストン・チャーチルといった政治家や軍人など、イギリスの英雄たちの像を大変多く目にしました。国史における偉大な先人たちへの敬意を、我々はイギリス人の様に持てているかとしばし自問しました。

また、滞在先のオックスフォード大学クライストチャーチ・コレッジは、同大学を中心に発展したオックスフォード市街でも中核的な存在であり、大学設立当初の面影を今に伝えていました。また、同コレッジの中には、オックスフォード主教管区の本拠であるクライストチャーチ大聖堂があり、大聖堂内部の荘厳な宗教芸術の数々は、キリスト教への信仰を肌で感じさせるものでした。

大学生活最後の夏休みにこのようなプログラムに参加出来たことは誠に意義深く、大学での学修の集大成とすることができたように思います。

DSC_0208.jpg

(コレッジの様子)

体験談一覧に戻る