ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季講座 体験談19
体験談19 2024年度参加 理工学部1年 S・Mさん
ケンブリッジで過ごした時間は夢のようであったと同時に、私の中に確かなものを残した。帰国しておよそ1ヶ月経とうとしている今、頭にある全てを整理しつつ、大切な思い出を忘れることのないように、ここに書き切りたいと思う。
1. 渡航前
私が英検準1級を取得したのは2023年の7月。取得したのはいいものの、お世辞にも級に見合った英語の運用ができない自分に長いこと悩んでいた。言わずもがな高校3年生の後半は忙しく、全くと言っていいほど英語には時間を割かなかった。何も進歩がないのはそれ相応の結果であった。高校時代は毎日のように英語の授業があったが、理工学部では週1回であることに驚き、理系の必修科目の多さと比重に圧倒されたと同時に、このままでは本当に何もしないまま2023年の7月をピークに自分の英語力は下降の一途を辿ってしまうのだという危機感を覚えた。指定校推薦のため入学までしばらく時間をもつことができた私は、何かできないかと調べ、ケンブリッジ大学ダウニングコレッジ夏季講座に行きついた。両親も、私の中高時代はコロナ渦によってそうした短期海外プログラムへの参加を断念せざるを得なかったことなども踏まえ、「今は行けるのだから」と後押ししてくれた。行けるもの、できることはそれが可能な時にやっておかないとタイミングを逃してしまうということを私たちはコロナ渦から学んでいた。海外に行ったことがなかった私は、初めはあのケンブリッジ大学に一歩でも足を踏み入れることは夢のような話だと思っていた。しかしそれはこの夏、現実となった。
渡航前は同じストランド(コースのこと。私はContemporary Artであった。)の人たちで食事会が開催され、留学前の不安の共有や持ち物の確認をした。
自ら行った準備としては、るるぶのイギリスガイド(ロンドンしかないがケンブリッジも少し載っている)や、メルカリで入手したケンブリッジの薄いシティガイド(ジャロルド観光ガイド。30年ほど前に出版されたものであった。)を熟読し、ケンブリッジがどういった街かをリサーチし、ロンドンの方も含め、行きたいと少しでも思ったところはGoogle Mapsで検索し保存しておいた。勉強面は事前配布資料に記載のあった「外国人が日本人によく聞く100の質問」を購入したが、この本でいう「外国人」が主に米国人や米国文化に焦点を当てた内容であり、英国であまり役立ちそうに感じなかったため数ページで読むのを断念してしまった。それ以外には何も行わなかった。ケンブリッジでは3週間みっちりと「学生『生活』」をすることになるので、お店での注文など日常生活で役立つ会話を学んでおけばよかったかなと今になって思う。
2. ケンブリッジに着いて
現地に着いたのは夜だった。ヒースロー空港から長いバスに乗り、ダウニングカレッジに到着すると、まず暗闇の中砂利道の上をスーツケースを引かなければならなかった。そのような第一印象でケンブリッジでの3週間は始まった。しかし、静かな環境の中快眠し、翌朝目覚めると、目の前には明るくすがすがしいイギリスの風景が広がっていた。その日の放課後、他の参加者の誰よりも早く、友人たちとケンブリッジ大学のパーカーを買いに行ったのは良い思い出だ。
2.1 一日の様子
授業がある日の一日は朝食から始まる。ダウニングコレッジはcourtという広い中庭を囲うようにして校舎が建っており、その中に食堂であるdining hallがある。ここで、基本的に朝・昼・夜の三食をいただくことができる。入ってすぐにサラダ・デザートバーがあり、その奥にメイン料理やおかずなどを注文する形式である。テイクアウトする容器が50ペンス(当時約100円)で購入することができ、外出で夜ご飯を食べることができなそうであった日は昼に料理をテイクアウトし、冷蔵庫で冷やしておいたりした(あまり良くはないかもしれない)。私の行っていた期間は昼と夜のメニューが同じだったが、毎日メイン料理が2種類+ヴィーガンメニュー1種類の選択肢があり、飽きることは全くなかった。"Can I have this one?"と言って注文することが多かった。初めのうちは特に量の調整が難しく、取yすぎて残してしまったこともあったが、段々と友達が「"Just a little bit."と言うと日本の適量になるよ。」と教えてくれたりしたため、それを知ってからは完食できるようになった。話を戻すと、朝は毎日あるパン(クロワッサン・パンオショコラ)がとにかく美味しかった。トマトフライやフィッシュケーキ(ナゲットのような料理)、beans、新鮮なフルーツ、ギリシャヨーグルトと紅茶を合わせれば大変立派なEnglish breakfastであり、三週間そのような良い朝を過ごすことができ幸せだった。金曜日の昼・夜はFridayと動詞fryをかけてイギリスで有名なフィッシュアンドチップスを食べることができるという粋なTipsがあった。デザートはキャロットケーキがとても美味しかった。二晩ほどコレッジにfood truckが来てアジア系の料理を食べた。またある夜はBBQという名のついた会が開かれ、サラダなどもあってお洒落なハンバーガープレートやピザを食べたりした。TAさんたちが企画してくださったパブに行ってまたジューシーなハンバーガーを食べた。
授業について。
1週目は、先生、TAさん各1人との簡単な面接の後、おそらく習熟度別の3つのクラス分けがなされた。初日に面接を待つ間、ライティングをした。テーマはケンブリッジの最初の印象であった。1週目は話すことやコミュニケーションに重点が置かれていた。クラスを歩き回って自己紹介をしつつ共通点を探したり、イギリスの大学システムを学んだり、イギリスと日本のNational Identityについて皆で考えたりした。最後にはケンブリッジに関係のある内容を選び、調べてそれをまとめプレゼンテーションを行った。授業でスライドを作る時間がきちんと与えられたため、時間が圧迫されて寝る時間が取れないなどといったことは全くなかった。私は、OLEMという、ダウニングカレッジから見えるカトリック教会について建築的な観点から紹介した。原稿を用意してもこの短時間では覚えられず棒読みになってしまうと判断し、あえて原稿を作成せずにプレゼンテーションに臨んだ。前日自分の部屋で行った練習では、言いたい内容をリストアップして、内容を漏らさずに流暢に説明できているかを意識した。プレゼンテーションで原稿を作成しなかったのは初めてだったが、先生たちにスクリプトを見ずに前を見て話しなさいと言われたことを考えると、自分にとってとても良いチャレンジだったと思う。本番もほとんどミスなく締めくくることができた。
2週目以降はストランドごとに分かれ授業が行われた。各ストランドで専門の先生が招かれ教えていた。私が学習したのはContemporary Artについてであった。理工学部生ではあるが、初めての海外であるため楽しみながら学びたいと考えていたため、自分の趣味に則ってこのストランドを第一希望とした。"contemporary"は"modern"とは異なって、「同時代の」という意味をもつ。そのためこのストランドは、単に最新トレンド美術を学んだ訳ではなく、19〜20世紀という比較的眺めのスパンで描かれた・造られた芸術作品について学んだ。その理解に不可欠な美術史の全体的な流れも学習し、豊富な内容だった。TAさんによる、アートワークの分析の授業もとても面白かった。ある絵を見て、その絵に関して思うことを発言する。アートワーク一つとっても背景が奥深く、普段美術館に行って1分も見ずに通り過ぎてしまうような絵にも実はこうした面白さが詰まっているかもしれないと感じた。趣味で美術館に行く際も、学芸員やキュレーターによる作品解説を読むように意識するようになった。授業内でコレッジの外にも行った。8/27にはケンブリッジのKettle's Yard Houseを訪れた。翌日行くTate Modernという美術館のキュレーターの自宅であった場所で、いつかこんな場所に住みたいと思うほど、美しいオブジェクトの収集センスに感嘆した。翌日は授業内ロンドントリップ(3章参照)であり、Tate ModernでMarcel DuchampのFountainという作品(本物は失われており、展示はMarcel Duchamp認可済の模倣品の一つだった。)を、授業で出てきて衝撃を受けてすぐに見れたことがとても良かったと思っている。Courtauld Galleryでは、モネやゴッホなどの印象派の作品が中心に展示されていた。3週目のプレゼンテーションで言及したマネの「フォリー・ベルジェールのバー(Un bar aux Folies Bergère)」もここで見た。私は印象派の作品がとても好みで日本でも美術展によく行っていたので嬉しい時間だった。
3週目は班のテーマに対する考えをまとめたポスター作成と、全ストランド前で発表するプレゼンテーションが中心だった。ポスター作成は、SDGsに関連させる条件のもと、"Art on the Internet ~New Opportunities and Problems~"という題目を私たちの班は選択した。プレゼンテーションでは、同じ班で"Ways and Places to Look at Art"というテーマでVirtual Museumの可能性について発表した。私たちの班はトリだったのでとても緊張したが、どうにか終えることができた。自分は緊張すると抑揚のない英語の発音になってしまうことが改善したい点だと感じた。他のストランドの人たちは、このような短時間でここまでできるのかというほどのプレゼンテーションでとても刺激を受けた。英語の発音、プレゼンテーションの始め方、姿勢...など、見習いたいことばかりだった。私たちの班のプレゼンテーションのあったケンブリッジ出発前夜は、いつものDining Hallがドレスアップされたような素敵な空間で、全員でFormal Dinnerをいただいた。特別な時間だった。
17時に授業が終わる。その後は基本的に自由時間となるので、そこをいかに充実させられるかがケンブリッジの街歩きの鍵であると思う。その奥深さは実際に行く皆さんそれぞれに感じてもらいたいと思うので、私が特に印象に残っている2つを挙げる。
①Punting at River Cam: ケンブリッジを流れるケム川でのPuntingを体験せずに帰国するという手はなかったと私は思っている。先輩が予約してくださり、その先輩と1年生4人で2週目の放課後に乗りに行った。1人10.6ポンド(当時約2100円)だった。美しい景色を眺めながら、ゆったりとした素晴らしい時間を過ごすことができた。申し込む会社にもよるかもしれないが、私たちのPuntingでは、大概のケンブリッジにおける有名な橋(数学橋やため息橋など)の下をくぐることができ、友人はある橋に手でタッチしていた。ボートの上では漕ぎ師さんとの会話も楽しみ、彼がイタリアから来たことと、ボート漕ぎはトレーニングとしてやっていることを知った。イギリス国王が学んだTrinity Collegeを、通りとは別角度で見ることができたのも良かった。もし次回があったら、自分たちで漕いでみたいと思った。
②Eagleというパブ: 最終プレゼンまであと2日という緊迫した夜ではあったが、最後にストランドの仲間に加え、お世話になった先生、TAさんでEagleというパブに行った。そこがなんと、DNAの二重螺旋構造を発見したワトソンとクリックがよく通っていた、400年続くパブだったのである。理工学部で理科が好きな私にとっては、その空間にいることができただけで十分すぎるほどだった。そんな私はそこでソフトドリンクを数杯飲んだ。ケンブリッジはこうした偉大な人々の面影を感じ思いを馳せることができる点が、大きな魅力の一つだと私は考えている。見逃してしまったが、スティーブン・ホーキング博士が昔住んでいた家もそのまま残っているそうだ。ダウニングコレッジまでの帰り道で皆でJack's Gelatoという、街で2店舗ある美味しいジェラートを食べた。試食で味噌という珍しい味があることを知った。ここでのジェラートは、ケンブリッジで食べるジェラート3本目であった。
この2つの他にも数え切れないほどの時間があり、そのそれぞれにストーリーがあった。充実という一言で片付けてしまうには勿体無いほど、ケンブリッジの街を歩いたと思う。
2.2 休日の過ごし方
全部で4日間あった休日(土日×2)のうち、ケンブリッジで過ごしたのは最初の土曜日1日だけだ。それ以外の3日間については3章で詳しく書いたのでそちらを参照してほしいと思う。平日をとにかくケンブリッジで楽しんでいたため、私はそれでちょうどよかったと考えている。
丸一日、ケンブリッジで何をしていたのか。午前はショッピング、お昼としてアフタヌーンティー、午後はKing's College礼拝堂見学というフルコースであった。本来であれば、午前はTAさんたちが企画してくださったPuntingだったのだが、天候が悪化し中止となった。(といっても軽く雨が降った程度で、川には普通にPuntingをしている人たちがいた。)それが結果としてショッピングとアフタヌーンティーに繋がったのでとても嬉しかった。
ケンブリッジでは大体のお店が閉まるのが18時、早いお店だと17時には閉店してしまうため、この日にじっくりとお土産を見て回ることができた。可愛い雑貨屋さんを見つけ、私はネックレスを購入した。
1年生4人で話していたのは、イギリスに来たのだから是非ともアフタヌーンティーはしたいということだった。私にとっては初めてのアフタヌーンティーであり、それを本場イギリスで経験できたことはとても光栄に思う。お店はFitzbilliesという地元のカフェを選んだ。これは第1週の授業内で、先生が美味しいし価格も手ごろな方だとおすすめしていたお店だから間違いがないと思った。実際、とても美味しく紅茶もゆっくりと味わった。店員さんが少し値引きしてくれて、最後に彼と皆で写真を撮ったのも良い思い出である。特に私はそこのスコーンにやみつきになってしまい、とうとう我慢ができなくなった9/5の放課後に一人で再度購入に行った。それを羨ましがった友人たちと共に、9/7(出発日)のモーニングとして3回目にしてスコーンの食べ納めをした。Fitzbilliesのスコーンに関してはもう後悔がない。しかしいつかまた行って食べたいと思う。
King's College Chapelは、春学期に履修した西洋建築史の授業で取り上げられていたため元から存じ上げていた建築であった。世界的に有名なゴシック建築であり、身廊部に柱一つない構造は、豪華絢爛でありつつも蜂蜜色の落ち着きを備えた空間の演出を可能にしていると感じた。一面のステンドグラスと、装飾と、...絶対にこの目で見たいと思っていた建築であったので、見れた喜びはひとしおであった。体感3時間ほど滞在していたと思う。授業で習ったままの構造がそこにあり、半年間西洋建築史を勉強しただけで、見える世界がこれほどまでに違うのだと建築学の面白さを実感した。一緒にいた友人にも、授業で習った内容を少し教えることができた。一方で、2人は文系学部で世界史を学習してきた人だったので、展示の内容を解説してくれた。絵柄の異なるステンドグラスを前にして腰掛け、1時間弱語り合うことができる友人をもてたこともまた幸せだと感じた。
2.3 現地の街の様子
日本と違って地震がない国であるため、昔からの歴史ある美しい建築物が大切にされ、街にそのまま残っている。どこを切り取っても絵になるとはこのことだと実感した。同時に、日本では、地震やかつての戦争・空襲によって多くの貴重な建物を失ったのだという事実もまたありありと感じられた。
街を行き交う人々の様子は明るく、ここもまた日本と違って歩きスマホをしている人が一人も見当たらない。皆、その日その場所での会話、人生を心から楽しんでいるように思えた。歩いている最中にスマホをしなければならないほど差し迫った用事はよく考えると中々ないと思うようになった。
暗くなってくると、昼間にはいなかった物乞いをする人が現れる。コレッジから近くよく通っていたスーパーの前にもいた。また、治安に関しても、ケンブリッジは学生街のためかなり治安が良いが、夜は昼よりも気を配って歩くようにした。友人から言われたこととして、「周囲への注意ができなくなるため歩きスマホはしない・スマホを見るなら道で止まらず壁に背を向けて前方に気を向けながら短時間で触る・スマホを外で見るときはは4本指で4点を支えるようにして持つ・荷物は自分の前にあるようにする」である。これを教えてくれた友人は、休日に一人でオックスフォードに出かけ無事に帰ってきた。見知らぬ土地での行動力に本当に尊敬している。
3. 目の前に広がっていたピーターパンの世界
私は未知の世界に飛び出していく系統の映画が好きだ。例えば、アラジン。ジャスミンがアラジンに連れられて夜のアラビアン・コーストを魔法のカーペットで旅する。また、ピーターパン。あの4人が空を飛び巡るシーンとYou can flyという曲はあまりにも有名だ。このピーターパンの舞台であるロンドンを、3週間のうち計3日も歩き、回れたことは何物にも代え難い経験となった。長くなってしまうので、行った場所を時系列で簡単にまとめる。
3.1. 友人2人との日帰りロンドン旅(8/25)
Notting Hill, Natural History Museum, V&A Museum, ロンドンバス乗車, Harrods
往復鉄道チケットは3人で取ると安くなるTrip.com(trainlineだったかもしれない。)というアプリで友人がまとめて購入してくれた。このチケットで、ロンドンの一部を除く地下鉄やバスは乗り放題だった。この日はスーパーオフNotting Hillは父がぜひ見てきてほしいと言っていた高級住宅街であるが、年に一度のカーニバルが開催されていた。初めはカーニバルであると知らず、行こうとした店が全て大きな板に覆われて閉まっていることや、大きな音を出して騒ぐ人々(おそらくそこに住んでいる人々ではなかった。)がいたことで、ここは本当に映画「ノッティングヒルの恋人」の舞台であるのかと疑問に思った。友人が笛を買い、皆でそれを鳴らすことで短い間ながらカーニバルに参加することができた。カーニバルは逮捕者が例年出ると言われるほどの盛り上がりで、「ノッティングヒルの恋人」のロケ地には近づくことができなかった。
帰りはケンブリッジまでのGreater Angliaという電車(それしかない)が故障で運行停止になっており、ロンドンに来ていた参加者の皆がLondon Liverpool駅で1時間ほど待機することになった。結局TAさんたちの指示によって、19:30にNorwich行きの電車に乗り、Ipswich(TAさんが迎えに来てくれた。)でケンブリッジまでの電車に乗り換え。寮に着いたのは23:30だった。この19:30の電車に乗り遅れた人は、TAさんたちがLondon Liverpoolに手配してくださったタクシーに乗り、ケンブリッジまで帰ったそうだ。このように予想外に電車が止まったりした時も、落ち着いて焦らず今できることは何かを考えることが大切だと実感した。帰りに止まった電車は全額返金されるそうだ(これを書いている明日、1年生4人の留学で仲良くなったメンバーで集まってお金に関しても色々整えることとなっている。)。
3.2. Contemporary Art(私のコース)での授業内London Trip(8/28)
Tate Modern, テムズ川, Courtauld Gallery, British Museum(大英博物館)
朝8時ごろに、6人乗りの車2台がコレッジに来ており(coachというイギリスでは呼ぶ。)、それに乗って2時間ほどでロンドンに着いた。行きのバスでは配布された温かい朝ご飯を食べた後、皆寝ていた。大英博物館は授業で訪れたわけではなく、先生から与えられたロンドンでの自由時間1時間で、私が友人1人を連れて大急ぎで向かったものである。Courtauld Galleryから走って15分。往復30分。荷物検査に並び15分。残りの15分で、古代エジプトとギリシャのゾーンの展示物をいくつかのみを見ることができた。ロゼッタストーンをはじめラムセス2世の胸像、モアイ像、パルテノン神殿関係の展示を見て、当初の計画では大英博物館は行けない予定だったので本当に思い切って行って良かったと思った。またちゃんと見に来ますと、出る時に心の中で誓った。
3.3. 先輩方とのザ・ロンドン(8/31)
Big Ben, Buckingham Palace, Fortnum & Mason, Sondheim Theatre(Les Misérablesミュージカル観劇), China City Russel Square(夜ご飯), Royal National Hotel(宿泊先)
4. 日帰りパリ(9/1)
セーヌ川, コンコルド広場, パリのLaduréeでマカロンを購入(食べ歩き...), ルーブル美術館, シャンゼリゼ通り, 凱旋門, トロカデロ広場周辺からエッフェル塔観賞, パリ北駅のPAULという店でクロワッサンとリンゴパイを購入
私は第二外国語としてフランス語を選択しており、フランスには行ってみたいと思っていた。同じContemporary Artの先輩方5名がパリに日帰り旅行を計画するというので、私もこの機会を逃すまいと両親にも許可を貰って、先輩方に同行させていただくことになった。 ロンドンのセントパンクラス国際駅を出発し、ユーロスターという新幹線のような電車で約2〜3時間。30分ほど遅延し(後々TAさんによるとこれは良い方らしかった。)、イギリス時間8時ごろユーロスターが出発し、フランス時間11時50分ごろパリ北駅に到着した。私はパリに行く決断をしたのが夏期講座1週目と大変遅かったので、ユーロスターの値段が往復8万円と、もっと早く買っていた先輩方に比べ1万円ほど高くなってしまった。klookというアプリで購入したが、日のレートによって日本円での値段が変わったり、買うのが使用日に近づくほど値上がりする傾向にあると感じたので、早めに購入することをおすすめする。着いてから、週末の若者向けの地下鉄乗り放題パスである"Navigo Jeunes Weekend Under-26 Ticket"を€4.70(当時約1000円もいかない程度)で購入した。(先輩方はスマホアプリで買えていたが私はスマホのバージョンが古いままアップデートしていなかったので現地購入。)1日パリの中心部を回るには、Zones 1 to 3で十分だった。ルーブル美術館のチケットは入る前日の8/31にGet Your Guideというアプリで4038円で購入した(公式サイトで操作が上手くいかなかったため。)。時間のない中私がNavigoパスを現地購入したため、2名、3名、1名(1名の先輩は学外ご友人と)に分かれての行動となったが、どちらも回る予定を立てていた場所は回り切った。3名の先輩方が帰りのユーロスターに乗り遅れそうになっていたため注意してほしい。帰りのロンドンのセントパンクラス国際駅からケンブリッジまでの鉄道はTrip.comで片道を4400円で8/27に自分で購入していた。(やはり鉄道は往復で買った方がお得だ。)
このように大変な金額のかかった日帰りパリ旅行であったが、日帰りパリ自体が本当にしてよかったと思える貴重な体験だった。それに加え、2024年はパリはオリンピックの開催地であり、街全体が世界の中心になったかのように活気付いていた。元々パリに持っていたお洒落なイメージは、そのままであった。オリンピックのためか、案内員さんが各主要駅に配置されており、英語で道順の会話をしたことが多く、フランス語は"Merci"くらいしか使わなかった・自らフランス語で話しフランス語が使えることを示すことができないくらいのフランス語力だった。日本に外国から来た人が日本語を話しているのを見て思うが、やはりその国に入ったからにはその国の言語をなるべく使うようにした方が、その国に対する敬意を払うことに繋がると思う。パリにいた4時間は私にとって密度の濃い宝物のような時間となった。いつか必ずまたフランスに行きたいと思ったので、その時までに、フランス語を上達させ、現地の人とフランス語で会話を楽しめる自分でいたい。その時は、時間の関係で見れなかったルーブル美術館1階(日本でいう2階)や、パリのお洒落なカフェ、シテ島のサントシャペル、オルセー美術館などを巡りたいと思う。
5. 帰国後の生活(まとめ)
ケンブリッジ、ロンドン、パリというとんでもなく有名な都市は確かに14時間の空の旅の先に存在していた。15分しか回れなかった大英博物館や、ハンムラビ法典を見逃したルーブル美術館、入りたかったが目に焼き付けてさよならをした美しい建物たち。この夏見たものが全て、私の美術や建築への興味を更にかきたてた。そして、かけがえのない3週間を過ごさせてもらった街、ケンブリッジ。またいつか、今度は自分の力でここに立っていたいと思えた場所だった。そのためには今後様々なことを考え、行動し、乗り越えていく必要があるだろう。言語を学ぶことで、自分の活躍のフィールドや選択肢を増やすことができるのはもちろんのこと、自分の思いをより正確により多くの人に伝えることができるようになる。この経験で広がった視野や選択肢を、単なる選択肢で終わらせることのないように、日々頑張っていきたい。まずは仏検3級が目の前にある目標だ。
そして何より、この講座への応募を承諾してくれた両親、セットアップしてくださった国際センターの方々、現地の先生方・TAさんたち、共に3週間を過ごした仲間たちに感謝している。また、この夏季講座はダウニングコレッジと慶応義塾大学間の長い歴史の元に成り立っており、そうした関係を築き上げ、守ってこられた歴代の皆様にもこの場を借りて感謝申し上げたい。
長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。