パリ政治学院春季講座 体験談13

体験談13 2018年度参加 法学部4年 Y・Fさん

【プログラムに参加したきっかけ】

私は法学部政治学科で4年間学び、大学生活の集大成として本プログラムへの参加を決めました。学部では中国や朝鮮半島などの東アジアの国際政治に関して主に学んでいたため、EUに焦点を当てて1ヶ月間学習することは自らの視野を広げるのにも役立つと考えたからです。また、今までに短期間韓国へ幾度か渡った以外は海外渡航経験がなかったため、1ヶ月間日本を離れて勉強に集中できる環境を作ってみたいとも考えていました。

【プログラムの内容に関して】

(1)パリでの1日の生活

授業は早い日で10時15分に始まります。宿から大学までは地下鉄で30分強かかるため、9時半には朝食を済ませて出発しなければなりません。パリ政治学院は小さなキャンパスを複数の通りのあちこちに持っているため、その日の授業が行われる場所を逐一確認して向かわなければならないのが大変でした。

食事は、現地のレストランで外食をすると高くついてしまい満足に食べられないので、基本的にはルームメイトと自炊をするか、マクドナルドやスターバックスなどのチェーン店を利用していました。自炊の材料は宿の近くにあるスーパーやパン屋で調達するか、日曜日にバスティーユで開かれているマルシェ(市場)でまとめて購入していました。

休日や、平日の授業がない時間帯の過ごし方は日によって様々でした。プログラム参加者やヨーロッパ長期滞在中の友人とともに観光に出かけた際には、オペラ座やエッフェル塔、オルセー美術館などパリの定番とも言える観光地をたくさん回ることができました。国外に旅行に出かけた友人も多く、私もスウェーデンとデンマークに行きました。また、一人でストラスブールなどパリの外に出かけたり、カフェで勉強することもありました。フランスで行きたいところはほとんどカバーできたと思っているので、後悔はありません。

パリでの生活において私が意識していたことの一つが、仲間たちと過ごす時間と一人で過ごす時間のバランスをとることでした。このプログラムで出会った様々な大学からの学生たちとともに多くの時間を過ごすことで、単純に楽しめるだけでなく、多くの刺激を受けることができ、自分のモチベーションを維持することにつながります。しかし、日本人だけで固まってしまっていては他人に頼りきりになってしまったり、せっかく来たパリで吸収できることも限られてきてしまいます。そのため、じっくりと一人で自分に向き合う時間を作ったり、一人で買い物や食事をしながら現地のフランス人の会話に耳を傾けたり、パリの街並みを観察する時間も大事にしていました。

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(セーヌ川の景色)

(2)パリ政治学院での授業

このプログラムの大半の時間を占めるのが、当然ながらパリ政治学院のキャンパスでの授業です。必修の授業では、EUに関して様々な切り口(政治、経済、法律、環境、歴史、英国のEU離脱など)から学ぶことができました。選択授業は、私は経済と国際関係の二つの分野を選択しました。経済は今まであまり慣れ親しんでこなかった分野であることもありとても難しかったですがためになりました。授業は1コマ2時間と長く、その分一度にたくさんのことを聞き、理解し、わからないことは質問しなければいけないので想像以上にハードです。自分が馴染みのないと思う分野に関しては日本にいるうちに予習しておいたほうがスムーズに頭に入るかもしれません。

(3)チューターによるエッセイ指導

このプログラムで課されていることの一つが、2500 words程度の英語のエッセーを執筆することです。テーマはEUに関わるものであれば各自で自由に設定することができます。執筆にあたっては、パリ政治学院の学生が担当のチューターとして配置され、2回ほどの面談やメールでの相談を通して指導をしてくださいます。私は「EUがG20のメンバーであることの意義」に関して書きました。担当のチューターはアメリカからパリ政治学院に来ていた留学生だったので、私にはなかった視点から多くのアドバイスをくださり、最終的にはある程度納得の行くものに仕上げることができました。また、ホテルの共有スペースで参加者みんなで集まってエッセーを書き進める作業をした夜もあり、互いに励まし合いながら執筆を進めることができました。

以上の三つ以外にも、Le Havre Campus とEU機関へのフィールドトリップやフランス語の授業がプログラム内には組み込まれており、充実した体験をたくさん経験できました。特にLe Havreでは、フランスの学生がEUやヨーロッパの政治に関してどのような知見を持っているかをディスカッションを通して知ることができてとても有意義でした。

【実際に参加してみた感想】

参加してみて興味深かったことの一つが、プログラムが実施された時期にあったような気がしています。3月末に予定されている英国のEU離脱が多く話題に上る中、EU圏でEUをテーマに学ぶことは非常に意義があることだと思ったからです。現地の学生も教授も英国離脱後のEUへの影響を様々に予測しており、まだ誰もわからない事項だからこそ多様な意見を聞くことができてとてもためになりました。

また、プログラムを終えた達成感と同時に、自分の実力の足りなさを痛感したのも事実です。特に自分に欠けていると感じたのは、教授に対して質問をする能力でした。講義を聴いて内容を理解するだけでなく、批判的に捉えたり補足事項を考えて、それを適切な言葉に落とし、自ら発言することは決して簡単なことではありません。しかし、それをするかしないかで授業で得られる物の量は全く異なってくると思います。実際に、教授の方々は授業で上がった質問をもとに話を広げる形で講義を展開してくださいました。私は2019年度から大学院に進学予定ですが、そこではここでの悔しさを生かして意義のある学びができるよう頑張ろうと決意を新たにすることができました。

【参加を考えている方に伝えたいこと】

私が一番伝えたいのは、学部・学年にかかわらず、興味があれば誰でも参加してほしいということです。少なくともこの慶應義塾内では、短期プログラム参加者は1,2年生が中心となっている場合が多いように感じられます。もちろん現地では丁寧にご指導をいただけるので、1,2年生が参加するのは早すぎるとか、内容に追いつけないということは全くないと思います。むしろ早いうちから短期留学を経験するのは大切なことです。しかし、3,4年生、また修士課程や博士課程の学生が参加しても物足りないこともまた決してないと思います。他大学からは院生の方もたくさんいらしていましたが、その知識量の多さや飲み込みの早さを生かして、授業ではたくさん質問をして場を盛り上げてくださったり、グループワークの際はリードしてくださったりと、とても周囲に良い影響を与えてくれていたように思うし、本人たち自身も多くを学ばれていたように見えました。また、私も4年生での参加ということで慶應義塾内では最年長でしたが、1,2年生の積極的に参加する姿勢に後押しされる場面も多かったし、今まで学部で学んできた経験があるからこそそれが現地での学習の中で生かされた場面もあるように感じました。さらに、法学部や経済学部からの参加が多いように感じましたが、どのような学部や専攻の学生でも積極的に参加すべきだと思います。なぜなら、EUに関係する事柄は決して政治・経済・法律だけではなく、歴史や環境問題、社会問題など多岐に渡るため、どんな学問であっても何かしらの形で結びつくからです。加えて、法学部や経済学部であってもEUの分野に長けている学生は限られているので、参加者全員のスタートラインは同じだと思います。

修了書を受け取ることが1ヶ月のプログラムの目的ではありません。現地の先生方の手厚いサポートの中、恵まれた学習環境の中でどこまで多くのことを学び、吸収できるかは一人一人にかかっていると思います。是非この有意義な機会に挑戦してみてください。

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(Le Havre Campus 研修後の観光での集合写真)

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